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第14話 訓練の日々ー隠された才能と辺境伯の戦略

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-11-30 14:42:02

 翌朝が待ち遠しい。そんなふうに感じながら、ユウはやっとの思いで眠りについた。

 柔らかな木漏れ日が差し込む森の一角。風が優しく葉を揺らし、静かで穏やかな時間が流れている。

「よし、まずは木のナイフを使って練習だ。」

 ユウがそう言いながら、二人に木で作られた短剣を渡すと、ミレディとシャルは目を輝かせた。

「わぁぁ……! これが訓練用の武器なの?」

「本物じゃなくても、なんだかドキドキします……!」

 ミレディは嬉しそうに軽く振ってみるが──

 ブンッ!

「わぁっ!? きゃあっ!」

 あっさりとバランスを崩して、ぐるんと回転しながら転ぶ。

「ちょっとミレディさん、それ振りすぎですよ……!」

 シャルが慌てて駆け寄る。

「うぅ……だ、大丈夫ぅ……! 軽いから余計に振っちゃったぁ……!」

 ユウは苦笑しながらミレディを助け起こし、木のナイフを持ち直すよう促す。

「ほら、まずは落ち着いて。敵に攻撃するんじゃなくて、急所を狙う動きを練習するんだ。」

「はいっ!」

「うんっ!」

 二人は並んで姿勢を正し、ユウの説明を真剣に聞く。

「例えば、相手が油断しているとき──こうやって静かに近づいて……」

 ユウが軽く手本を見せると、二人とも集中して真似ようとする。

「こ、こう……?」

「静かに……近づいて……」

 ミレディとシャルは何度も繰り返しながら、楽しそうに練習を続けていた。その様子を見守るユウも、思わず微笑んでしまう。

 こうして、穏やかな森の中で、二人のほのぼのとした訓練が始まった。戦いというよりは、遊びのような雰囲気──だが、確実に少しずつ成長している。

(これなら、焦らず無理なく進められそうだな。)

 ──しばらく、のんびりと訓練をしていくはずだったのだが……

 初めは護身術のつもりだったが、途中から訓練の方針を暗殺術に変更したのが正解だった。そう、予想以上に二人の動きが鋭く、暗殺術と相性がいい。

 吸収の速さは驚異的で、まるで本能的に動いているかのようだった。ミレディもシャルも小柄で力こそないが──その瞬発力とスピードは尋常ではない。武器を扱う際の動きも無駄がなく、まるで獲物に向かう捕食者のような敏捷さがある。

 これは……まさに暗殺術向きだった。

 敵が油断している隙を狙う──この戦術に適した素質を持っている。ただの護身術ではなく、一撃で決めるための技。二人には、戦いにおける「迷い」がない。だからこそ、攻撃の速度が無駄なく研ぎ澄まされている。

 この戦闘スタイルをさらに洗練すれば──どんな相手にも対応できる術になる。ユウは静かに息を吐きながら、武器を構えた二人を見つめた。

(この訓練、思った以上に──面白いことになりそうだな。)

 森の訓練場 ― 双剣の練習試合

 清々しい朝の空気の中、俺たちは訓練場へと足を運んだ。木々の間から差し込む光が、心地よく地面を照らしている。

「じゃあ、今日は双剣の訓練をするぞ。」

 そう告げると、ミレディとシャルは少し緊張した表情を浮かべた。

「えっとぉ……ユウくんにケガさせちゃうのはイヤだなぁ……」

「私もです……ユウ様に傷をつけるのは絶対に嫌です……!」

 二人は申し合わせたかのように、心配そうに俺を見上げる。俺は軽く苦笑しながら、彼女たちを安心させるように言った。

「なら、お互いにバリアを張れば問題ないな。」

 ミレディとシャルは顔を見合わせ、頷くと──

「それじゃあ……バリアおねがいっ!」

「おねがいします!」

 柔らかな魔力が空気に満ち、二人の周囲に薄く輝く防護結界が広がる。俺も同じようにバリアを張り、試合の準備を整えた。

「よし、じゃあ始めるぞ。」

 訓練開始の合図とともに、ミレディとシャルが一気に動いた。双剣を構え、目にも留まらぬ速さで駆け出す。

 ──速い。

 俺の予想以上に、二人は見事な連携を見せた。ミレディが軽やかに前に出ながら斬りかかる──その隙を、シャルが寸分違わず補うように攻撃を繋げる。攻撃の切れ目がない。まるで対話するように動きが噛み合い、双剣の連携が見事に成立していた。

「すごぉい……! シャルちゃん、ぴったりだよぉ!」

「ミレディさんも、すごく動きが綺麗です……!」

 二人は互いを褒めながら、それでも俺に向かって攻撃を続けてくる。もちろん、技術はまだ荒削りだし、パワー不足もある。

 だが──これは伸びる。

 瞬発力とスピードを活かした双剣戦術は、まさに二人に向いている戦い方だった。俺は攻撃をいなしながら、確信する。

(この訓練、もっと洗練させれば──本当に強くなるな。)

 試合の最後、俺は軽くバリアを張りつつ、二人の攻撃を受け流した。

「ふぅ……なかなかいい動きだったな。」

「ほんとぉ!? やったぁぁ♪」

「ありがとうございます……でも、もっと上達したいです!」

 二人は嬉しそうに微笑みながら、それぞれの双剣を軽く見つめる。

 こうして、初めての双剣訓練は大成功に終わった。

 次は──さらに実践的な動きを教えようか。

 訓練場 ― シールドを足場にする戦闘術

 休憩を挟み、次に取り組んだのはシールドの練習だった。

「この魔法は防御用じゃない。足場として使う。」

 俺の言葉に、ミレディとシャルは一瞬きょとんとした表情を浮かべたが──

「えっとぉ……足場にぃ?」

「シールドを……踏む、ということですか?」

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